PHILOSOPHY

神谷卓宏の理念について紹介しています。

誰もやらない研究をする。誰もが前に進むために。

自分の価値観を一変させた、ひとつの研究

 私は以前、京都大学大学院で、石原昭彦教授の共同研究者として運動療法の研究に取り組んでいた。当時、石原教授は別のテーマとして「難治性不妊症に対する軽度高気圧酸素の効果」という研究にも取り組んでおられた。

不妊症は今も大きな社会問題のひとつであり、不妊に悩むカップルの葛藤は計り知れない。この研究に協力してくれた方々も、5回以上の体外受精を試みては失敗を繰り返してきた女性たちだった。

 ところが研究の中で、通常よりもやや高い気圧、やや高い酸素濃度の環境に1回1時間、複数回にわたって滞在してもらうことで、なんと37名中13名の女性が妊娠し、うち7名が出産にまで漕ぎつけたのである。この驚くべき数字は、私の価値観を一変させるに十分なものだった。

 それまでの私は、ただ自分の疑問に対する答えや、結果が出る面白さを求めて研究を続けていたように思う。それが「社会問題の解決に貢献したい」という強い思いに変わった。そして「科学の力でそれができる」という確信が生まれた。この研究※は今も、私にとって学者、経営者としてのバイブルとなっている。

成し遂げたいこと、それこそが私の原動力

 今、私は生理学者としてヒトのさまざまな生体反応について研究しながら、運動療法を中心とした予防医学を提供する施設も経営している。どちらの立ち位置に偏ってもいけない。目指しているのは、医科学の研究を通じて得た最先端の最適解を、広く一般に伝え共に実践し、「人類を一歩先に進める」ことだからだ。

 人々が抱えるペインを、確かなエビデンスのもと、あらゆる方法を駆使して解決する。これを一生続ける覚悟でやっていく。悩み苦しんで立ちどまる人がいなくなれば、ヒトはまだまだ進歩できるはずだから。今後はこれまでの経験も活かしつつ、脳、うつ病、不妊症の研究に注力したいと考えている。

そして個人的な思いとしては、世界初のことを成し遂げたい。具体的に、1つ目はまだ誰も相関関係を証明できていない、予防医学のアルゴリズム開発。2つ目はまだ誰も論文を出していない、運動療法の方法論の明示化。この2つの理論を確立し、世界的に認められることが3つ目。最後に、これらを一般化するためのビジネスを発足させることが4つ目である。

「人類の進歩への貢献」と、「人類で初めての達成」。どちらも実現した人が、果たして世界にいるのだろうか。そこに挑戦したい、やってみせるという思いこそが、私の一番の原動力なのだ。

※「Yoshikawa F, Netsu Y, Shimizu T, Ishihara A. Mild hyperbaric oxygen improves the outcome of infertility treatment. Journal of Reproductive Medicine. 64 (9-10). 339-345. 2019.」